35男 不安に向き合わないことでウツから回復
私は地方で小さな会社を経営しています。
35歳で結婚もしております。
うつになったのは4年ほど前の事でした。
会社の経営が傾き始め、銀行から融資をしていただかないと経営さえ困難な状況に陥ってしまいました。
というのも、もともとこの会社は私がやりたくて始めたわけではなく、以前勤めていた会社の取引先から「今付き合いのあるフリーランスの人材を社員にしないと仕事ができない為、あなたが社長になって数人のフリーランスの人材を社員として使ってくれないか。
」という話が挙がったことがきっかけでした。
そのフリーランスの方々とは面識もあり仕事もした事があったため、その方々が良ければ、という事で始めた会社でした。
その取引先の方も良くしてくれて、特に最初は問題なかったのですが、雇ったうちの一人が仕事で大赤字をだしてしまったのです。
色々な事情が重なっての事だったので、その従業員を責める事は出来ませんでしたが、銀行から融資を受け埋め合わせをし、その連帯保証に私個人の名前が挙がりました。
その頃にうつと診断されました。
銀行から融資を受けたのは100万200万ではありません。
こんな小さな会社にはとても大きい金額、私個人にはとても返済できる金額ではありません。
そこから悩み始めてしまったのです。
順調にいって月々の返済で返せるならそれでいい、しかし、従業員が辞めてしまって営業できなくなってしまったら借金が残ってしまう。
そもそも今まで通り仕事が今後あるのだろうか。
従業員もみんな私より年上、いずれは退職となると私一人だけが残ってしまい結局会社を畳むしかない。
今まで経理と事務しかやってこなかった私に再就職なんてできるのだろうか。
再就職を考えるなら今こんな事をやってる暇ないのではないだろうか。
借金自体、私の落ち度ではなく従業員一人のミスで何故私がこんな目にあっているのだろうか。
妻にどれだけ迷惑をかけてしまうのだろう。
真実を知れば別れを切り出されるんではないか。
地元で知り合いにあったらどんな顔されるのだろう。
などなど考えると眠れなくなってしまい、昼夜逆転からの不眠になってしまいました。
眠いのに眠れない、そして頭の中は常にネガティブな事ばかりぐるぐると回っていて、子どもと遊んでも映画を見てても何も楽しくなく食欲もなくなり、気持ちに余裕が全くなくなってしまいました。
いつまでこんな普通の生活を送れるんだろう、いつ「あ、もう駄目だ」という瞬間がおとずれるのだろうという事ばかりで、いつの間にか大好きな映画やゲームをやる気力さえ起らなくなり、家ではただボーッと天井を眺めるだけの生活が続きました。
眠れないので真っ暗な部屋の中、明け方までずぅっとです。
そこで精神科にかかり、睡眠導入剤でも貰おうと受診してみたところうつと診断されました。
導入剤は貰えなく、治療していきましょうという事で精神安定剤を頂きました。
しかし、それを飲んでも不安やネガティブな思考は抜けないのに頭の中がフワフワしていて、日中仕事にならない事が多々ありさらに悩んでしまいました。
私ははじめて妻に弱音を吐きました。
「今の会社の状況はこうだ。
」「今後どうなるかわからない。
」「何かある前に教えるから名義の変更やらなにやらして、迷惑かけないように離婚してもらっても良い。
」というような事を言ったと思います。
妻は私の事を軽蔑し、別れを切り出してくる。
という事はなく、妻は「そうなったら考えよう。
最悪な事になっても私も頑張るから。
あなたがどうしてもだめならバイトなんかで家事メインにしてもらっても良いから。
借金だって何億とかじゃないでしょ?大丈夫大丈夫、少しの間辛抱すれば返せるよ。
無理しないで」と言ってくれたのです。
私は何か、とても救われた気持ちになりました。
すべて失うのが怖くて気張ってやってきていましたが、きっと思ってるほど失うものはないのだろうという事がわかったからです。
そして妻は「いっつも一人で悩んで抱えすぎ。
周りをもうちょい信じなさい」とも言ってくれました。
会社のグチなんかを家庭に持ち込みたくなかったので、今まで不安などを口にした事がなかったのですが、一緒にいて15年、初めて口にした不安に対してこういう返事が来るとは思っていませんでした。
私は「でも明日からまたいつどん底に落ちるかわからないと思うと不安だし迷惑かけるかもしれない」と話すと、妻は笑いながら「なんかの映画でいってたけど、明日の面倒は明日の自分に任せておけば良いよ」と言いました。
なるほど、と。
漠然とした不安に今から怯えていても仕方ない、今出来ることがあればやれば良いし、悪いことが起きそうだと分かったら対処できるようにしておけば良いという事だと納得しました。
それから悩むのをやめました。
言い方を変えると上手に現実逃避出来るようになりました。
すると徐々に不眠も治り、趣味も楽しめるようになりました。
時々、フラッシュバックのように急激な不安に襲われる事はありますがそれは誰しも同じだと思うのです。
みんながみんな、それと戦っていきているのですから。
私の場合のうつから立ち直るきっかけは、誰かに相談してみる事と漠然とした不安に向き合わない事でした。
慰みの言葉はたくさんあります。
「人生、死ぬまでの暇つぶし」「どんな金持ちでも幸せな人でも150年は生きられない」「明日の面倒は明日の自分に任せろ」「寿命まで生きられると思うな、一秒後に死ぬかもしれない」などなど。
どれも無責任に聞こえるようですが、実際そうです。
悩んでダウナーになるより、今日の天気が良い事を自分に確認させる事が大事だと思うのです。